精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記
(+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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『37日目の日記
今日はケサちゃんと海に行きました。
とっても楽しかった。
スイカ割り大会にも参加してみたよ。
ケサちゃんに応援してもらって、なんとか当たりのスイカを叩けたみたい。
また、こんな日があるといいな。
あ・・そうそう!ギルさんって人とシズクリアスプリズムさんっていう人と戦いました。
ギルさんの歯が折れて、白い歯が手に入ったけど・・・・・その空いたところにフローラお姉ちゃんがバナナを詰めていたのでみんなで大笑いしました。
でも、この歯、どうしよう・・・何かに変えられるといいな。』
今日はケサちゃんと海に行きました。
とっても楽しかった。
スイカ割り大会にも参加してみたよ。
ケサちゃんに応援してもらって、なんとか当たりのスイカを叩けたみたい。
また、こんな日があるといいな。
あ・・そうそう!ギルさんって人とシズクリアスプリズムさんっていう人と戦いました。
ギルさんの歯が折れて、白い歯が手に入ったけど・・・・・その空いたところにフローラお姉ちゃんがバナナを詰めていたのでみんなで大笑いしました。
でも、この歯、どうしよう・・・何かに変えられるといいな。』
「そろそろ花火に行きますか?」
昼間ケサちゃんと海に行って帰ってきてからシャワーを浴びて、少しだけお昼寝(夕寝?)をして、氷彌さんに浴衣を着付けてもらった。
日記をゆっくり書いている間に緋魅も氷彌さんも着替えて今日はお着物を着てる。
「着物に内輪が花火を見る時にはよいらしいですよ。」
そうは言っても海で水着で花火を見ると言った人もいたし、普段着でいいんじゃないの?って思ったけど、せっかく二人とも着替えたのだし。
3人とも着物というのも悪くないよね。
アンジェリカは浴衣だけど。
花火を見るのに良さそうな場所は緋魅が昼間見つけておいてくれた。
海から少し離れた湖のそばの平原。
カップルも多いかと思ったけど、ここは人気が無いと言ってた。
どうしてと思ったら・・・・背丈ほどもある草がいっぱい。
「有翼人ならこの草を越えられますが、普通の人は無理でしょうね。この視界の悪さを利用して不埒なことをたくらむ者もいるようですが、この草は肌
が切れやすいので掻き分けて進む人はそんなにいないのですよ。」
そういいながら緋魅に抱きかかえられて草原を越える。
丘の上には大きな木。
その木のそばに、なぜか草が途切れて広い芝生が・・・
「ここは火で燃やされたことがあるのですよ。
だから、この周りだけ草が枯れて・・・あと数年すれば、また草に侵食されると思いますけどね。
・・・そこに座りましょうか」
緋魅の指差した先には横倒しになった木が。ちょうどベンチのかわりになりそうだけど・・・この木は最近倒れたみたい。なんだか不自然。
「ひょっとして緋魅が倒したの?」
「いいえ、倒れていたものを運んでおいただけです。このあたりに座るものがなかったので。」
そっか。不自然と思ったら、途中から折れて倒れているのに、周りに折れている木がないんだ。
せっかく用意してくれたベンチなのでありがたく座らせてもらう。
「ほら、始まりましたよ。」
その声を掻き消すように大きな音。
そして空に花開く大輪の花火。
「うわぁーーー綺麗。」
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°Summer Vacation / 夏の花火 .。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
思わず口を開けたまま花火を見上げている少女を見て微笑ましく思った。
氷彌と目があう。
思わず二人で頷く。
今日はあのことは黙っていよう。
それにしてもこの場所がこんな風になっているとは驚いた。
料理小屋のあった場所は華煉が堕ちたときに燃やした炎で草もほとんど生えていなかった。
わずかに残った草も島の時間が流れ始めたあの時に燃えてしまった。
悲惨な焼け跡を覆い隠すために少しだけ芝をもってきたが、おそらくこの草も枯れてしまうだろう。
この地は火の意思が強すぎるから。
少女は気づいていない。
氷彌が彼女の周りの空気を冷やし続けていること。
この場所の暑さは尋常ではない。
あの日・・・・・あの男はこの場所にいた。
湖のそばの料理小屋。
あと10日もすればあの男は消えてしまうはずだった。
清蘭がどれだけ力を尽くしても残せない命。
それをあと10日間だけ生かすために清蘭はすべての力を使っていた。
時が過ぎて、あの男が消えれば、華煉はあの呪われた鎖から解き放たれて、輪廻の輪に戻っていくはずだった。
だが、島の暴走がそれを邪魔した。
暴走した島の時間の中で、あの男の時が止まった。
本来なら10日で消えるはずの命は延々と生きつづけた。
そして再び時が流れた時に、それまでの時の流れを一気にその身に受けて、あの男は巨大な火柱を放って何も残さずに消えてしまった。
同時にそれまでの歪な時間・・・・10日間よりも遥かに長い時間・・・・あの男の身体を維持した力を一気に奪われて清蘭も消えてしまった。
あの男の体も、その体を維持していた力も一気に消滅・・・
火喰い鳥のナイフの中に封じられていた華煉は戻る肉体を失い、精神体として焔霊に戻ることも出来ず、そのまま散ってしまった。
火喰い鳥の民を縛っていた、あの二人の呪縛が消えて、火喰い鳥の里は一気に炎上。
火喰い鳥の民はすべて焔霊へと転生した。
精霊界とこの物質世界の門も閉ざされ、この世界に残されたものは・・・・・私以外にいるのだろうか?
あの男は魂ごと消失した。
清蘭も存在ごと消失した。
だが、肉体をなくして散った華煉は消失まではしていないはず。
どこかにいるかもしれないあの子を探して、わずかな可能性にかけてこの島に残り、疲れ果てた時に偽妖精の身体を借りてそのまま眠りについた。
この少女に起こされるまでは。
そして、この少女は地下4Fであの因縁の火喰い鳥のナイフをみつけた。
そして華煉があの男に紅葉一番街で買ってもらったと言う腕輪についていた赤い石を見つけた。
どうしてこの少女なのだろう。
私が一緒にいるから、この少女が選ばれたのか?
私を目覚めさせる力を持っていたから、この少女に託されたのか?
託したのはあの子のはず。
華煉・・・・どこかにいるならもう一度会いたい。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
緋魅は考え込んでいるみたい。
花火をみて、ふと気づいたら、ずっと目を瞑って花火も見ずに黙り込んでいた。
なぜか哀しそう。
闇の中でほんのりと見える緋色のオーラ。
それが揺らいでいるのがわかる。
聞いてもいいのかな?
聞いちゃいけないのかな?
よくわからないから、今は花火を楽しもう。
あとで緋魅に綺麗な花火の話をいっぱいしてあげよう。
氷彌さんの方を見たら、にっこり笑ってカキ氷をくれた。
子どもらしく喜ぼう。
「わぁーおいしそう!ありがとう!!」
花火を見ながらカキ氷をパクついて、振り返ったら緋魅と目があった。
笑ったら、戸惑ったように、ぎこちなく、それでも笑ってくれた。
子どもは子どもらしくあることで、周りの人を幸せにできるらしい。
だから、子どもらしく甘えよう。
しつこく我が侭を言うのではなく、おねだりしたり、お礼を言ったり、はしゃいだり。
それが子どもの持っている力。
計算して子どもらしくするのって可愛くないよね。
それでもその行動にだまされる人はたくさんいる。
子どもは早く大人になりたいと思うけど、大人は子どもに子どもでいてもらいたいのだ。
子どもにはいつまでも子どもでいて欲しいから、子どもらしい子どもを受け入れてしまう。
見たいものを見て、見たくないものから目をそらす。
都合のいい事実だけを記憶する。
そうして騙される。
大人は騙されたいんだ。
騙される側が騙されたいと思っているから簡単に騙される。
それに気づいたのはいつだったかな。
多分レイモンドを貰う前から。
レイモンドを貰った日だって、子どもらしく喜んだら、ママもレイモンド叔父さんも喜んでた。
パパはにやっと笑ってた。
きっとパパは見抜いてたんだ。
花火の音がしてはっと気づいた。
カキ氷をぐしゃぐしゃとかき混ぜながらいつのまに考え込んでしまっていた。
頭を軽く振って、カキ氷をぱくつく。
頭がキーンと痛む。
ちょっと涙目になりながら、また夜空を見上げた。
今は花火を楽しむ時間。
考えるのはあとでいい。
「ねぇ、あっちの人がいっぱいの場所からも花火見てみたいな!みんなもいるかもしれないし!」
ほら、こういう一言で何かが変わるかもしれないから。
夏の夜の花火はまだまだ続くようだ。
(その2に続きます)
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