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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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カルルとの戦闘も順調で、俺たちはいろいろな買い物資金を溜めていた。
俺はついつい無駄遣いしちゃんだけど、レグはどうするんだろう?
宿で手持ちのきらきら光る玉石を眺めるのは楽しい。
もっといろんなものを集めたい。
 
食事のときに女将が言ってたけど、この町も冬になるときらきらした物で飾られるらしい。
海に近いこの町がきらきらしているのは楽しそうだな。
 
そんなことを考えながら俺はベッドに潜りこんだ。
海は暖かいから空気の冷たさは苦手だ。
この宿は心地いいけど、やっぱり風霊たちは入り込んでくるし、空気を引っ掻き回して冷たくしてしまう。
災渦がいるから大丈夫だけど・・・災渦の力を無駄に使わないためにも、俺は暖かくして休まなきゃ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ヴェルは相変わらず素直で、こういうところはかわいい奴だ。
そんなことを考えながら夢の回廊を渡る。
稀なる奏者の夢へと潜り抜ける。
 
「久しいの。稀有な奏者よ。
そろそろ妾に聞きたいことがいくつかあるのではないか?」
 
姿を整えながら、そう声をかけた。
久々に奏者の夢は安定しているが、これからの話次第では回廊は大きく揺らぐだろう。
気を引き締めねば。
 
「ああ、久しぶりだな。聞きたいことは山ほどある。
そういえば、前に会った時はすぐ帰っていたが、何かあったのか?」
 
前?
そうか。ヴェルがあの夢を見た日か。
確かに慌しく戻ってヴェルの心を守ってやらなければならなかったが、
そんな心の傷まで他人に知られたくはあるまい。
 
「そんなことが聞きたいのか?
まぁ妾にも都合というものがあるのだよ。
しかし、本当にそれが其方の聞きたいことなのか?」
 
半ば呆れてしまったのがそのまま声に出たが、この程度のことには慣れてもらうとするか。
 
「・・・・今日は色々聞いても良さそうだな。
俺の考えが合ってるか確認も兼ねて、まずこれが聞きたい。
貴方はヴェルの守護精霊なのか?」
 
ふむ。さすがにその程度は察したか。
 
「然りとも言える。否とも言える。
 
妾が守るべきものは他におる。
が、その最も愛しきものとは引き裂かれておる。
会えぬことはないが、妾の意思では会えぬ。
 
ヴェルはその最も愛しきものと対を成すもの。
妾の最も愛しきものの影。
ヴェルに何かあれば、妾の最も愛しきものも傷つく。
故に妾はヴェルを全力で守っておるのよ。」
 
私が答えている間、奏者はめまぐるしく考えを巡らせているようだ。
何を考えている?
深く考えすぎではないか?
 
「光と影?ヴェルは双子なのか?」
 
「否。ヴェルに兄弟姉妹はおらぬ。」
 
「双子でないということは光と影ってどういう意味だ?
すまない、俺にはいまいち分からないんだ。」
 
イライラするが、耐えねば。
この奏者はなぜこんな本筋と全く関係のないことを知りたがる?
そんなこと知らなくてもいいのに。
私は素直に言いすぎただろうか。
ヴェルの守護精霊だと肯定しておけば良かった。
失敗したかもかも知れない。
 
「妾には光と影としかいいようがないのお。
其方、それがわからねばヴェルを助けるのは嫌か?」
 
これでも光を知りたいと言うのであれば、ここまでだ。
この奏者にこれ以上深入りさせるのはリスクが高すぎる。
 
「呪いとは何だ?」
 
少し考えて奏者はようやく質問を搾り出した。
ようやく呪いの話にたどり着いたか。上々だ。
 
「そうじゃの。何故呪いが発生したかはもう知っておるのじゃな。
まずは妾が今出来ることと妾が出来ぬことを説明するが、そこからでよいか?」
 
「ああ、まずはそこから頼む。」
 
「まず妾のできることじゃが、ヴェルの身体に相当な力を及ぼすことが出来る。
例えば、ヴェルの外傷などは妾の力で半日とたたずに回復しておる。
ただし、条件があり、他の者の目があるところでは十全に力を揮えぬ。
それ以外にもヴェルはその気になれば二週間程度何も食わずとも、何ら支障なく生きていけるよ。
妾がバイタルを管理しておるからな。
封じられたとは言え最低限の守護は可能じゃ
 
・・・・ただし、妾は他の者に対してほとんど影響力を揮えぬ。
それゆえ、ヴェルに対して危害を加えるものがおっても、その者に対して何も力は揮えぬ。
他にもいくつかの制約があるが、もっとも大きいものは、ヴェルと意思疎通が出来ぬということよ。
今の妾はヴェルに対して言葉をかけることはおろか、笑いかけることも、頭を撫でてやることもできぬ。歯がゆいことよのぉ」
 
実際、あの程度のゴブリンや狼にヴェルが傷つけられるのを見るのは歯がゆい。
小手の姿を取ったとは言え、妾には彼らを追い払う術はない。
少しだけ手首を守ってやることしか出来ないのはなんとも歯がゆいものだ。
 
「ということは守護精霊は普通なら意思疎通ができているものなのか、それはヴェルも貴方も辛いな・・・。
 
前に話した時にヴェルに夢のことを話さないで欲しいと言っていたが、誰かが間に入ってヴェルと接触することも制約に触れているということで良いのか?
呪いが解ければその制約も解けるのだろうが、呪いとはどういうものなんだ?」
 
呪いとはどういうものか・・・・言葉を選ばねばならないな。
話して良いことといけないこと・・・これ以上の呪いをヴェルにかけるわけにはいかない。
 
「そうじゃ。今は妾はそなたと夢の回廊で通じておる。
じゃが、其方がヴェルに話せば、この回廊は二度と開かぬよ。
 
しかし・・・・・・呪いとはどういうものか?難しい質問じゃの。
妾たち精霊はこの世の自然な流れを力の媒体としておる。
それゆえ、世界が拒むようなことをすると、自然と力を揮う範囲が狭まる。
力を揮おうとしても世界が力を貸してくれぬゆえ、何も起こらぬといえば良いかの。
我らの呪いとはそういうものじゃ。
 
ヴェルの呪いも同じようなものよ。あれもかなり特殊な民ゆえな。」
 
少し言い過ぎたか。それともぎりぎりセーフか。
ヴェルには異変はないようだが・・・
特殊ゆえに話せないと言う形にしてしまう方があとあと考えるといいだろう。
 
「そうか。ということはヴェルにこのことを知られないようにしながら呪いを解く方法をやっていかないといけないのか。・・・それだけでも難題だな。
世界が拒むようなこと・・・それが話に聞いたあの顛末か。
 
ヴェルについては今のを聞いただけでも、特殊な一族だと理解したよ。
ヴェルの呪い・・・だが、ヴェルは精霊ではないよな。
ヴェルの呪いはどういうものなんだ?鍵とヴェルも言っていたし、もしかして故郷と一族に関するものなのか?」
 
さて、ここからはさらに言葉を選ばねば。
私が言ってはいけないことを言えば、瞬時にこの回廊も消えるだろう。
 
「ヴェルのほうの呪いじゃが、まず、あれは自分の国の記憶を持たぬ。
国の場所もわからぬし、記憶も多くを奪われておる。
あれらは特殊な民ゆえに、記憶を残しておくは危険と判断されておるゆえ。
呪いに関する記憶は奪われておらぬゆえ、母親の記憶は残っておるが、他の一族の記憶は顔すらほとんど残っておらぬよ。
 
ヴェルは呪いを解くための場所の記憶とその場所に入る鍵を持たされておるし、呪いを解く儀式の方法も知っておる。
しかし、肝心の呪いを解くための鍵となるものを探さねばならぬ。
 
それ以外にもヴェル本来の力も能力も封じられておるよ。
その多くは妾の力を介した水の力ではあるが、妾の力そのものがほとんど封じられておるゆえな。」 
 
「相当特殊な一族なんだな。どんな一族なんだ?
場所に入る鍵?もしかして首からぶら下げてるあの鍵のことか?
その儀式の方法や場所に解く為の鍵を俺からヴェルに聞くのはまた難しいな・・・。ヴェルではなく貴方からそれを聞くことはできるのか?
あとそうだ。呪いを解くのに何故俺を選んだんだ?
ヴェルが言っていたキーになるものを見つけられる人間が俺なのか?」
 
質問をする方が気楽で良いな!
聞けば何でも与えられると思っているのか、此奴は!
 
「質問が多いの!
人間一人の記憶を奪うぐらいの一族の秘密を妾が話すとでも思うか?
儀式の方法や場所は秘中の秘。
妾もヴェルも答えられぬよ。
 
何故そなたを選んだか?
それは簡単な理由で、其方が数少ない妾が回廊を開く条件を備えていたからよ。
言うたであろう?ヴェル以外の者に対して力はほとんど揮えないと。 
 
其方は特殊なのじゃ。
もちろんヴェルと共鳴するほど、精霊に愛されておる一族であることも確かじゃが、もっとも大切なことは・・・・・其方はヴェルの身体を癒す存在じゃ。
その精神構造は妾との共通点も多い。
それゆえ、妾は其方の夢に通じることができたのよ。
他の者ではなかなかこうはいかぬ。」
 
「それはそうだな。
ヴェルの身体を癒す存在?家で学んだ術を使っているだけで、あまり意識したことはなかったが何かあるということか。
まだ分からないことは多いがヴェルの呪いを解く為に俺でないといけないことがあるということは分かった。
その呪いを解く為の鍵を探すには俺はどうすれば良い?
それと・・・おそらくだがヴェルを救うことが貴方の最愛の人を救うことにもなるんだよな。貴方の最愛の人ってどんな人なんだ?」
 
 
 
 
・・・・・・・・・私は選び間違えたかもしれない。
この男に話すべきではなかったのだろう。
この男は今やヴェルだけでなく、私の封じにまで興味を持っている。
私の守るべき者がどんな人なのかなど、ヴェルの身を案じているだけなら絶対に出ない質問だ。
ヴェルと一対というそれだけでは納得しない、それほどの興味。
 
好奇心は人間の原動力であり、そして、時にその身を滅ぼすものだ。
周りのものすら巻き込んで。
 
今の私はこの男の記憶を消すことは出来ない。
私はこの男にそこまで干渉できない。
ならば、距離を置くしかあるまい。
この男はヴェルに危害を加える存在ではないが、私の真珠姫に近寄せて良い者かどうかはわからぬ。
 
「呪いを解くための鍵を探す方法・・・
難問でな。其方の智恵も借りたいぐらいだ。
その鍵とはある一連の言葉じゃ。
実は妾は鍵となる言葉を知っておる。
じゃが、其の鍵を口にすることは禁じられておる。鍵が何であるかを語ることもな。
仮に妾が何かしらの方法でそなたに伝えられたとしても、それを其方がヴェルに伝えた瞬間に、妾は其方に対して二度と語りかけることが出来なくなる。
其方に間違って伝わり、其方がヴェルに間違ったことを語ってもそれを指摘することはできぬ。
・・・・・そろそろ時間のようじゃ。
またの。稀有な奏者よ。」
 
これで終わりだな。
この奏者は危険過ぎる。
私に興味を持ち過ぎている。
別の人間を探そう。
 
 
 
私は回廊に慎重に封じを行おうとして・・・留まった。
ヴェルと常にともにある人間。
まだ利用価値があるかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「レグ、レグ、珍しいな。こんなに遅くまで寝てるなんて。ほら、もうそろそろ出かけないと。俺はごはん食べたよ。レグの分は女将が外で食べられるように用意してくれてるから」
 
「ん・・・もうそんな時間か。すまん、少し疲れていたみたいだ。」
 
 
俺がレグを起こしにいったとき、レグはまだ寝てた。
疲れているのかな?
今日は俺もちょっと頑張ろう。

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