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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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儀式が終わった後で、もう一度服を脱いで全身を父様に清めてもらう。
4つの刺青以外にも変化がおきていたら今封じてもらわないといけない。
だから、全身余すところ無く父様に確認してもらう。

さすがに18歳の女性にとって、義理の父親とは言え、男性に全身を余すところ無くさらすのは苦痛なところもあった。
だが、今ここで父様のチェックを受けなかったせいで、さらに異形化が進んでは悔やんでも悔やみきれない。


「役得ですね。」


父様は家族に対してだけはにやっと笑いながらこういうことを言う。

ごく普通の信者の方々にこういうことを言ったら、多分父様の権威って半分ぐらいは失墜すると思う。
アンジェリカなどは父様がこういうことを言うと真っ赤になって怒る。

「お父様が聖職者なんて何かの間違いです。雑念とか淫心がいっぱいで、それで女性の身体を清めるなんて信じられない!」

なんていいながら。
オーレリア母様も同じように怒る。

二人が怒るからこそ、父様はからかってそういうことを言うんだってわかってる。
家族だから、こういうことを冗談で言うんだってわかってる。

だから、「役得」と言うときだけはにやにやしていても、ちゃんとまじめな顔をして全身を診てくれるのが私にはうれしかった。
家族なんだよって言われてるってわかるから。


「カヤは怒りませんね。帰ってきたら毎日チェックしてあげましょうか?」

「・・・・父様、せめて月一ぐらいでお願いします。」

「月に一回妙齢の女性の身体をくまなく弄れる(まさぐれる)というのはなかなか良いものですね。」


前言撤回したくなってきた・・・・


「父様、弄るとか言うのやめてください。なんだか表現が卑猥です。」





「おやおや、カヤ、もうギブアップですか?このぐらいの猥談は軽く受け流せないと困りますね。」

「・・・・・・これもテストなんですか?」


父様は答えてくれなかった。
なるほどね。
これもテストなんだ。
父様はそのあとは何も言わずに真剣にチェックをしてくれた。


「翼と刺青以外はなさそうですね。
 あと封じるとしたらもう一枚の翼が生えそうな場所を封じておくぐらいですけど、どうしますか?」


左側の背中。
確かに今右から翼が生えている以上、近いうちに左からも生えるんだろう。


「父様、まだ何の兆しもないものを封じられますの?」

「翼を封じるわけではなくて、その場所の変化を封じるのだから、できると思うよ。」


そうして、焼けるような熱と共に5つ目の花が私の身体に咲くことになった。


(余談だが、あとでアンジェリカがなぜ父様の祝福を拒んだのか聞いてみた。
詳しくは語らなかったが、アンジェリカの貞操の変化を封じたかったとか・・・
儀式が該当箇所に口づけるというものである以上、アンジェリカが嫌がったのもなんとなくわかった。
父様が私の貞操を守ろうとしなかったのが若干不思議な気がしなくもないけど、やはり10才と18歳では扱いが違うということなのだろうか?)






「さて、最後に助言を。」


そういって父様はもう一度別の祈祷を始めた。
祭司としての力はまだまだ健在で、神を降ろして助言を賜る。
父様であって父様でない何かがそこに降りてくる。


『カヤ、君の今の状態はとても不安定。
何かが君に憑依しやすい状態。危険。
封印が一つ足りない。
6つの封印が君を守る。
封印を弱めるのは次元を超える召喚術
心を惹きつける魅惑の術。
この二つの技を持つ者と一緒に行動してはいけない。
封印が揺らぐ。
長くとも3日。それ以上一緒にいてはいけない。
火の力を味方につけなさい。畏れるな。
火を使うことでは変わらない。
火を使うことで自分が変わるのではないかという畏れの心に勝ちなさい。
火を使っても変わらない自分を確立すれば、やがて元に戻るだろう。』



錫杖で床を叩く。
そして父様であって父様でないものは父様へと還る。


「もう一箇所封じないといけないようですね。」


助言を引き出して父様は本当に疲れていた。
それでも私を守るために・・・・・もう一度祝福をくれた。

6つ目の花の場所は秘された。
そのためにわざわざ私を深い深い眠りにつかせて・・・・・起きた時には終わっていた。
熱を持ったはずなのに、まったくわからない。
ただ、何かが変わったことだけは私にもわかった。


「助言を忘れないように。」


そういわれて祈祷室を後にする。

召喚と魅惑の力を持つ者と行動しないこと。
母様とアンジェ姉はあきらめるしかない。

そして、二人とこれ以上一緒にいてはいけないこともわかっている。
出発の日は明日にするしかないだろう。


「父様、ありがとうございました。必ず一年後に戻ります。」

「一年後により一層美しくなっているだろう君に会うのが楽しみだよ。カヤ。必ず戻っておいで。」


そういってポンポンと頭を叩いてくれた。

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