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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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グレゴール・ザムザって人を知っている?
その人はある朝起きたら蜘蛛になっていたんだって。

ある朝起きたら自分が異形になっている。

そんなことが自分に起こるなんて思ってなかった。
ただ、身に憶えが無いわけじゃない。


私、カヤ・ボーフォートは生まれ方も普通の人間とは違うのだから。


今はもうない島。
私はそこで卵のようなものから10才の姿で生まれた。
卵は一種の結界で、私の身体はそこで作りかえられて10才になった。
10才というのも外見年齢からの推測でしかない。

作りかえられる前の私は暴走した島に巻き込まれたヒトの残滓だったという。
華煉と呼ばれたその人も普通の人とは違っていた。
その人は元は焔の精霊で、人間を好きになって、
・・・そして、精霊から人間に堕ちたのだという。

ただし、厳密に言うと純粋な人間じゃない。
精霊が人間になったとき、純粋な人間にはなりきれず、緋色の翼を持った民として生まれるのだと。
それが火喰い鳥の民と呼ばれる有翼種だと聞いた。

翼持つ人となった華煉さんは愛する男の人を失って、
島の暴走に巻き込まれて、
そして、消滅しかけていたのだと聞いた。

ただ、華煉さんのことをあきらめきれずに島に残った焔霊がいた。
それが緋魅。

緋魅も暴走した島に巻き込まれて、
華煉さんを探すのに疲れ、
やがて力を失って、島の生物の身体に潜んで眠りについてしまった。

それをたたき起こしたのが、血のつながらない私の姉のアンジェリカだった。

アンジェリカは魅惑の力で偽妖精を従え、その中に残っていた緋魅を無意識のうちに掬いあげた。
彼女は結界の力と変革の力を持っていたので、緋魅の結界を解いて、偽妖精を変革することを無意識にやってのけた。

目覚めた緋魅は華煉さんの残滓を探し、それを見つけた。
見つけて、見つけたけど逃げる華煉さんを封じたのは、やっぱりアンジェリカだった。

彼女は華煉さんの魂と残滓を卵のような結界に包み込み、変革の力で人ではない部分を取り除いてしまった。

そうして生まれたのが私。火耶だった。



今はない島でアンジェリカは島の主の娘を倒す戦いに参戦した。
彼女は島の主を倒せなかったけど、他の者たちが主の娘を倒した。
そして、島はなくなり・・・・・私、火耶はアンジェリカと共にしばらく旅を続けた。

それが今から8年前のこと。


3年前にアンジェリカは両親のいるイシリアに戻った。
アンジェリカが戻ったとき、アンジェリカの家族にはいろいろなことがあったらしく、
アンジェリカはアンジェリカ・ラッセルからアンジェリカ・ボーフォートに姓を変え(結婚したわけではない)、
そして、私はアンジェリカの妹としてボーフォート家へと迎えられたのだった。


私の身体に翼が生えた時に、私の身体を診た父様と言うのは、養父で名をセオドアという。
彼が見てもわからないということは、これは異常ではなく、時がきたということなのかもしれない。

だけど・・・・火喰い鳥の民など知らない。
私は異形ではなく、普通の人として生きたい。

それは叶わぬ願いなのだろうか?

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