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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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隊商護衛も2回目となると要領がわかってくる。
俺達は少し隊商から離れて警備に当たることにした。
レグが精霊を使えること、いざとなったらすぐに駆けつけられること。
それにアルベルト達も監視されているとそれはそれで不自由と感じたこと。
理由はいろいろあるが、とにかく、俺とレグにとっては都合のいいことになった。
 
今日の夕食も俺が水を汲んできて、レグが準備。
できたものは俺達でも食べられるもの。
さすがに宿と違って味付けはシンプルになってしまうが、それでも俺にとっては十分だ。
 
そう。
食事はいいんだ。
いいんだけど、何故かレグが考え込んでるみたいだ。
俺が宿で言った事で何か考え込んでいるのかな?
ときどき俺に何か聞きたそうにちらちら見てるし。
隊商といるとどうしても周りに人が多くなるし、二人でいるつもりでも、いつ隊商の人が来るかわからない。
だから、話したくても話せないのかな?
うーーん。俺もいまここで何か訊かれても話せないし。弱ったな。
 
今日の野営はレグから休んでもらうことにした。
多分、災渦が俺のバイタルに干渉しているんだと思うけど、ちっとも眠くならない。
レグは珍しくうなされているみたいだ。
起こすべきかちょっと悩むけど、また静かになったので、時間まで待つか。
 
夜の森はたまに梟の声がする。
それ以外は静かなものだ。
焚き火のパチパチという音がときどきするだけ。
隊商のほうも数人交代で起きて寝ずの番をしているみたいだ。
夜の森で焚き火を見るのは嫌いじゃない。
火はあまり好きじゃないけど、炎が踊るように舞う姿は水の一族の俺から見てもあこがれる。
火霊たちの踊りは水霊たちより激しくて、荒々しくて、落ち着きたい時には今いちだけど、
今日みたいな日に一人で見ているのは悪くない。
 
 
 
「んーそろそろ時間か?」
ちっとも眠くならないが、多分交代の時間だ。
少しでも眠っておく方がいいんだろうな。
レグを起こすか。
 
レグは眉間にしわを寄せて寝てる。
まだ嫌な夢でも見ているのかな?
 
「レグ、レグ、そろそろ時間。」
「ん・・・」
 
レグは少し目をこすりながら起きてきた。
少し疲れているような・・・。
 
「大丈夫か?」
「あぁ、そろそろ時間か。」
 
レグが起きたのを見て、今度は俺が寝る準備を始める。
適当に地面をきれいにして、毛布をかぶって横になる。
刀を抱いて、いざとなったらいつでも抜けるような体勢で眠る。
 
眠る。
 
眠るはずだった。
けど、やっぱり寝れない。
俺は寝つけなくて、座って毛布を肩からかぶってみた。
そのうち寝たくなるかもしれないし。
 
「寝つけないのか?」
「うん、今日はダメ。なんか寝れない。」
 
火を見てるとますます目が冴えて寝れなくなってくる。
 
「ヴェル」
「ん?」
「そう言えば女将さんから聞いたんだが、なんであの宿の部屋を全て貸し切ってるんだ?一部屋なら分かるんだが・・・。」
 
そういえば女将が喋っちゃったって言ってたっけ。
 
「ん・・・あの宿なら多分大丈夫と思ったけど、あぁいう宿でもたまに人間と一緒になるからさ。
 前に一緒になったときが最悪で、ずっと寝れなかったから。
 それにあそこ4部屋の宿だから、レグみたいにいいヒトを見つけたら、そのヒトたちに泊まってもらえば楽じゃん。」
 
そう俺が昔見つけた青い花の宿。
確かに食べ物は魚や肉が出ない宿で、泊まっている人もそういう人たちが多くて・・・
そこでも2ヶ月ぐらい滞在していたけど、その2ヶ月目にその国でお祭りがあって、普通の宿に泊まりたいけど、普通の宿が混んでて泊まれない輩が俺の泊まってた宿にやってきた。
食事は外で食べて、寝るためだけに宿に帰ってきてたんだが、とんでもない連中だった。
よりにもよって青い花の宿なのに、着ている服は毛皮や革製品。
首からは何かの骨を削りだしたネックレスをして、おまけに宿に焼き魚をもって帰ってきやがった。
宿の主人もさすがにこれには反発して、宿に入る前に処分してくるのが礼儀だと言っていたが、どこ吹く風。
本当にとんでもなかった。
ここまでひどい例はそうそうないけど、でも、普通の人が来ることはたびたびあった。
食事を宿で食べる人たちも多かったけど、外ではその分肉を食べてきているんだろう。
嫌なにおいがした。
それ以来、俺はできるだけ小さな青い花の宿をさがして、あまっている部屋は借り切ることにしている。
 
その話をしたらレグも本当に嫌そうな顔をしてた。
けど、レグはまだ何か聞きたそうだ。
 
「前から気になっていたんだが、ヴェルは人間とヒトを使い分けているのか。」
 
「・・・・そういうもんじゃないの?
 あれ?俺ずれてる?」
 
レグはなんと言っていいのか困惑してるみたいだ。
えっと・・・・
 
「俺から見て、肉とか魚とか食べたり、動物の命を奪って生きている連中が人間なんだけど。
人間って動物とか魚の悲鳴を背負ってるから、見るだけでわかるし。
人間がそうやって生きるための栄養をとっているって言うのは理屈ではわかるよ。
わかるけど、アレだけの恨みを背負ってて気づかずにいれる鈍感さってすごいと思う。
でも、前に一緒だった精霊協会の人に聞いたけど、普通の人間はそういうのが見えなかったり聞こえなかったりするらしいね。
俺から見たら一目でわかるんだけど。
レグも見ただけじゃわからない?
目の前にいるのが人間かどうかって。」
 
「恨み・・・俺で言う死の泥みたいなものか。あいにく、俺には一目で見抜く力はないな。隣にいてようやく感じるぐらいだ。」
 
「なーる。うん、納得。
やっぱりヒトならわかるよな。
あ、ヒトって言うのが命を奪ったりしないで生きているヒトたちのことだよ。
俺、呪われてて容易に呼び出せないとは言え、精霊との結びつきが強い一族だから、人間はだめなんだ。」
 
特に水霊との結びつきが強い俺にとっては魚を料理するところがダメ。
少し離れていても声が聞こえる。
魚が震えてる。
まな板の上に載せられて、やめて、やめてと言っている声も。
助けて、見逃してという声も。
そして、そのあとの断末魔の声も。
その魚たちが人間に憑いている姿も。
そういう連中と一緒にいるなど、俺にとって悪夢以外の何者でもない。
やつらはグールみたいなものだ。
 
「一応禁忌とかあるからさ・・・・グールを叩きのめすように人間を叩きのめしてはいけないってことはわかってる。
でも、本当は人間のいる場所は嫌いだ。
人間も嫌いだ。
だけど、俺が戻るためには鍵が必要だから。」
 
なんだろう。急に眠くなってきた。
災渦?
なんで?
レグにヒトと人間の話を聞かせたかったのか?
災渦??
 
「ごめん。なんか眠い。寝る。」
 
レグが何か言ってる。
言ってるけど、もう俺の耳には入らない。
眠くて・・・眠くて・・・・・
 
 
 
夢の中で災渦に会った。
俺に対しては無表情。
きっと何か言いたくて、でも何もいえなくて。
ただ、今日は目が穏やかだ。
災渦?なんで?なんで?
答えはあるはずもなかった。

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