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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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川の流れる音がする。
川沿いのキャンプは危ないんじゃないかとレグが言ったけど、俺が問題ないと説き伏せた。
レグはさっきから料理の準備している。
アーベルもそんなに料理は得意じゃないらしく、普通の携帯食を食べるつもりだったらしいから、レグの料理に同意した。
おかげさまで今日の野営はそんなにきつくない。
豆とか香草などを入れ込んで何かスープ状のものを煮込んでいるみたいだ。
 
俺は何となくうれしくなって見張りをしながら歌を歌ってた。
子どもの頃に憶えた歌。
レグは不思議そうな顔をしている。
そりゃレグの言ってた歌い手さんほどうまくはないだろうけど、アーベルの顔を見ている感じだとそれほど下手じゃないはず。
 
空が赤くなって、やがて暗くなり始める頃にレグの料理ができたらしい。
お皿に盛ってみんなで食べる。
 
「ヴェルさん、歌上手なんですね。不思議な歌でしたけどヴェルさんの国の歌なんですか?」
 
アーベルはちょっとお酒が入って陽気になってるみたいだ。
 
「あぁ、あれは俺が子どもの頃にならった歌だから、俺の一族に伝わっている歌といえばそうかな。
海のそばだから、海を称える歌が多いんだけど、さっきのは『海からうまれしヒトは、いろいろな波を経験して、最後に海に還る』って歌。
割と繰り返しが多いから憶えやすいんだよね。」
 
そう。俺の一族に伝わる歌は波のリズムにあわせてか、リフレインが多い。
リズムは単調なんだけど、音の高低、響きの大小、で全然聞こえ方が変わってしまう。
俺は下手ではないけど、特別上手いってほどでもない。
 
「レグの笛の音の方がすごいと俺は思うよ。」
 
レグの笛の音は大地に響いていく。
俺の歌が海の歌なら、レグの音は大地への賛歌だ。
誰が聞いても上手いと思う。
だから精霊も力を貸してくれるんだろうな。
 
「そうですね。レグさんの笛は素朴だけど、聞くとすごく心に響きますよね。」
 
「おいおい、そんなに褒められても何も出ないぞ?ブラクエイの奏者を生業にしている人に比べればまだまだだよ。けど、そう言ってもらえたのは嬉しいし励みになるな。ありがとう。アーベルは何か楽器は演奏しないのか?」
 
「いや、僕は音楽のほうはさっぱり。音楽以外でも人様にこれって言える特技とかないんです。料理も下手だし」
 
「えぇ、宝石ハンターだってすごいじゃん!」
 
レグとアーベルの会話に思わず口挟んじゃった。
いや、俺宝石ハンターにあったのははじめてだけど、正直こんな才能があるなんてびっくりしたし、うらやましいとも思ったから。
レグも頷いてる。
 
「そうだな。宝石ハンターはすごい才能だ」
 
「宝石ハンターは才能って言うか・・・僕にとっては面白いんですよ。なんていうか、この辺りにありそうって思って、そこに自分を待っていてくれる宝石がいてくれると、運命の人に出会えた気分です。」
 
なるほど。
それが俺たちの霊玉になるっていうのも面白い。
待てよ。
 
「こういう宝玉が欲しいって思ったらどのあたりにありそうとかわかるもん?」
 
「そうですね。今までの先輩方の経験などで大体どの地域にどんな宝石が多いかはわかってきていますし、その中でどこにっていうのは自分の勘になりますけど、勘だけじゃなくて、過去に似た地形を見たとかそういう経験もあわさって、なんかわかるんですよ。うまく言えないけど。」
 
「へぇ、すごいね!」
 
うーん、勘か。
勘と経験だとどうしようもないな。そういう地形とか聞けば自分でもわかるんじゃないかとおもったけど、そんなもんでもないらしい。
災渦に助けてもらえば、水中ならなんとかなるかな?
真珠ぐらいなら俺でも大丈夫なんだけど・・・・。
 
夕食の間、ずっと宝石の話題で盛り上がってた。
アーベルも嫌な顔一つしないでいろいろ教えてくれて、おまけに小さな形のわるい玉石だけど、川原で俺とレグに一個ずつ見つけてくれた。
こいつ本当にいいやつだ。
すごく楽しい夜だった。
 
 
 
川の近くで気力が充実していたから、今日はレグに先に休んでもらって、俺は先に見張り。
二人のために火がつきないように木切れをくべながら、水霊の気配に耳をすませていた。
何かが来たら水霊が教えてくれる。
地震のような大地に影響することでも、水霊は俺に教えてくれる。
今日は何もない。
地も落ち着いているし、精霊が俺たちの周りに戯れているから動物たちも遠くから近寄ってこないようにしているみたいだ。
 
アーベルは何度も寝返りうってる。
レグはあんまり動いてないな。
二人ともどんな夢を見ているんだろう。
 
 
 
 
 
妾は昨日作った夢の回廊へ力を注ぎ込んだ。
 
「また会うたな。稀なる奏者よ」
 
「ああ、また会えたな。ということは、昨日のことは夢だが実際に起きたことだったんだな。昨日の質問の続きをさせてもらう。君は何者なんだ?」
 
「昨日も言うたが妾は名乗る名を持たぬ。というより封じられておる。妾は今いくつかの誓約に縛られておる身でな。
名を呼べぬは不便かも知れぬが、許してたもれ。
それよりも昨日も言うたが、其方に頼みがある。それゆえ其方の夢に妾の回廊をつながせてもろうた。」
 
「・・・他人が夢の中に入ってくるのはあまり良い気分がしない。けど、そこまでして頼みたいことも気になるな。頼みってなんだ?」
 
さて、ここからが本番。
ヴェルに知られずにヴェルに力を貸すように仕向けなければ。
この者が私と語れることを知ると、ヴェルが追加の禁忌を侵しかねない。
多少の封じも必要かもしれないが、私の力の残滓にヴェルが気づいても困る。
尊大な態度。
人間に信じられている高位精霊はこんな言動をするだろうと思われている態度をとらなくては。
そんな精霊と会ったと言うだけで人に疑念を向けられるような、普通と違う様子をこの者に植えつけなければならない。
本来、私達濤霊はヒトと交わるぐらい親しみやすい精霊なのだが・・・・そうも言っていられない。
何度も計算した筋書き通りに進むかどうか。
 
「うむ。妾の誓約のいくつかのために、苦労している者がおる。妾はその者のために封印をなんとかして解きたいのじゃ。」
 
「封印を解くのに何故俺を選んだ?俺にはそんな特別な解封の力はないと思うんだが。
それに仮に俺にそんな力があったとしても、封印を解けと言われてすんなり解く訳にはいかないな。
会ったばかりの、しかも夢に侵入してくるような相手の言うことだ。何か良からぬことをして封印されたんじゃないかと疑いもするさ。」
 
「信用できぬか?そうよのぉ。簡単に信じて力を貸すような愚か者など信用できぬは妾も同じ。
それに封じられた者に力を貸したくないと言う気持ちもわからんでもない。
よかろう。誓約に触れぬ範囲で・・・・まず、妾の誓約で苦労しておる者というのは其方の連れじゃ。」
 
「ヴェル?」
 
これは賭けだ。
どこまで情報を小出しにするか考えた。
ただの不審な精霊では助けようとは思うまい。
ヴェルの名前は出さざるを得ない。
だが、私がこの男と話せることをヴェルには知られたくない。
この男がヴェルに安易に夢の話をしないようにするために、どうすべきか・・・。
まずはヴェルの旅の目的を知ってもらわねばならない。
それを私の口から言うわけにはいかない。
この男は遠慮し過ぎる上に他人のことは喋ってくれるまで聞かない性格のようだ。
なんとかしてヴェルの旅の目的を聞くように仕向けなければ。
人魚に興味を持っているのであれば、そこをつつくしかない。
 
「うむ。妾は彼の者を救いたいのじゃ。そこに関わる部分のみ解ければ他の妾の封じなど大したことではない」
 
「ヴェルが君の救いたい相手?」
 
「そうじゃ。妾の封印を解く方法は妾も彼の者も知っておる。知っておるがそのための鍵が欠けておる。
彼の者はその鍵を見つけねばならぬ。
だが、彼の者だけでその鍵を見つけるのは至難。
そこで其方の力を借りたい。
信じられるのであれば、彼の者に旅の目的を聞いてみるが良い。其方にならばそろそろ教えてくれるじゃろうて。」
 
「・・・・・」
 
奏者は考え込んでいる。
すでに禁忌にスレスレの話題。
これ以上この話題を妾から話すわけにはいかない。
ここで質問をされては困る。
今のうちに話題を変えねば。
 
「まだ納得いかぬかや?妾は彼の者のそばに常におるのじゃが、夢でしかこの姿を見せられぬゆえ、信じてもらうは難しいか・・・
おぉそうじゃ!彼の者のそばにおらねばわからぬことを教えてしんぜよう。
其方、彼の者が宿を借り切っておるのを存じておるか?あの宿は四組の人間たちが本来は泊まれる場所よ。
それを彼の者が借り切っておるのよ。妾はその代金として彼の者が宿の者に何を支払ったかすら知っておるよ。」
 
「確かに俺達以外に宿泊客を見ないなと思ったが、それが本当だとしたら何を払ったんだ?結構な金額だよな。」
 
「人魚の鱗よ。それも3枚もな。」
 
「人魚の鱗だって!?そんな希少な物を何故ヴェルが・・・?」
 
食いついた!!
これでこの男はヴェルからいろいろ聞きだそうとするだろう。
あとは私のことを喋らないように口止めせねば。
言魂の力を載せる。
 
「信じられぬかもしれぬが事実よ。それを彼の者に聞いてみると良い。
そろそろ時間よの・・・・
一つ約束して欲しい。妾と夢で会ったこと、妾と会話できることなどは彼の者に絶対に語らんで欲しい。
それを語ると妾は其方の手を借りることが出来なくなるでな。」
 
「分かった。・・・・」
 
奏者はまだ何か語っておったようじゃが、今はこれが限界。
これ以上力を使うわけには行かない。
幸い最後のわかったという言葉によって、奏者は私の言魂にかかった。
長くは持たないが、しばらくは私のことをヴェルに話そうとはしないだろう。
うまくいってくれるといいが・・・・・
 


 
 
 
「レグ、レグ」
 
俺はアーベルを起こさないように、そっとレグを揺すって起こす。
レグはまだ少し眠そうだが、俺の顔を見るとはっとしたような顔をして目覚めたようだ。
疲れているのかな?
レグは俺に攻撃が来ないように何度も狼を挑発していたし。
 
「時間だけど大丈夫か?俺まだ眠くないからレグが疲れてるならもうちょっと休んでてもいいけど?」
 
俺はアーベルを起こさないようにそっと囁いた。
レグはまだちょっと起き上がりにくそうだ。
俺はアーベルの様子を見たが、彼は熟睡しているみたいで起きそうにない。
 
「ヴェル」
 
「しー。静かに。アーベル熟睡してるから大丈夫だとは思うけど」
 
俺はレグが起き上がるのを助けた。
レグは目をぱちぱちさせてる。
 
「大丈夫か?」
 
「夢・・・」
 
「え?」
 
「夢を見たんだ・・・・」
 
レグにしては珍しいな。
まだ寝ぼけてるのか?
でも、小声になったから、アーベルが寝てることは思い出したのかな?
 
「すまん。変わろう。ヴェルも寝てくれ。」
 
「あぁ、じゃあ、頼む。」
 
そういわれて横になったけど、レグがじっと俺を見ているので気になって寝られない。
俺は起き上がってレグのそばに座った。
 
「なぁ、なんか俺に聞きたいことでもあるのか?レグ変だぞ。」
 
「・・・・・ヴェル」
 
「ん?」
 
「人が苦手なのに、どうして精霊協会に?」
 
「あぁ、俺「ヒト」は嫌いじゃないよ。「人間」はダメだけど。精霊協会に来たのは・・・レグになら言ってもいいけど、アーベルが起きて聞かれると嫌だしな。」
 
俺は少し考えて断片的に答えることにした。
 
「俺、俺の国から追放されてるんだ。
 帰る方法はあるんだけど、そのための大事なものが欠けてて。
 それって精霊に関わることだから精霊協会に何か助けがないかとおもって来てみたんだ。
 今はそんなもんで勘弁して。宿に帰ったらもう少し詳しく話すよ。」
 
そういうと急に眠くなってきた。
これは災渦が干渉してきてるな。余計なこというなってことらしい。
 
「お休み。」
 
「ヴェル」
 
「なんだよ。」
 
「・・・・いや、なんでもない」
 
レグは何か聞きたそうだったけど、俺は急速な眠気に負けた。
 

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