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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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逃げるおにくは本当によく逃げた。
おかげですっかり消耗してしまった。
こんなに消耗するはずではなかったのに、自分の作戦ミスもあってかなり疲れてしまった。


平原を抜けて森についたころには疲労がやってくる。
眠りたい。
ここで眠ってしまいたい。


少しだけなら・・・








チャリという金属のこすれる音がした。
暗い暗い闇の中。


誰かがいる?
何かの気配が。
禍々しい、だけど何かを狂おしいほど求める気配。
これは何?


私は片翼を出そうかと思った。
焔の翼が辺りを照らしてくれると思ったから。


リュックを下ろして、翼を広げようとしたとき、ポンッと肩を叩かれた。


振り返ろうとした。
なのに金縛りにあったかのように振り返れない。
でも背中に誰かがいる。


怖い
怖い
翼を広げて追い払いたい。









誰かが私の背中に手を置く。
翼を広げることを諌めるかのように。





『だめだよ。カヤ。君が君であるために』






不意に背中が温かくなる。
背中から誰かに抱きしめられている。
心臓の音が聞こえる。
私の心臓の音が重なる。


怖くない。
怖くなんかない。
だって、この腕を知っている。
この声を知っている。


私を愛してくれる人。
私を守ってくれる人。
私を救ってくれる人。


この人になら私を預けられる。
この人になら私のすべてを晒すことが出来る。
この人の差し出すすべてを受け入れたい。


私の・・・
私達家族の最強の守護者。
誰よりも強い人。
誰よりも優しい人。
誰よりも大きい人。
誰よりも穏やかな人。


どんな過ちも
どんな愚かしさも
笑って受け止めてくれる人。

そして、私を光の中に留まらせてくれる人。








父様・・・










目が醒めた時には、少しけだるくて。
だけど、少しだけ幸せだった。

左の背中が少し痛い。
これはきっと背中の刻印。
夢にうなされて翼を出そうとしたから。
それを止めてくれたのは父様の刻印。
きっと、あの闇で私は翼を広げてはいけないのだろう。
それを肝に銘じた。


少しずつ意識が覚醒する。
そして少しずつ状況を思い出す。
そんなにのんびりと眠っていられる状況ではなかった。


ラベンダーの香りが仄かに香る。
心が落ち着く。
そして、青い青い石をぎゅっと握る。


傍らには女性
私と同じように手にぎゅっと握っているのは十字架だ。


はじめて見るもの。
それにどこまで対応できるか。

それを試すために無謀にもゾンビ退治にやってきた。
引くわけにはいかない。


カヤ「行く!」

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