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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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『21日目の日記

今日は遺跡外で久々に取引をしたり、練習試合をしたりしました。

練習試合の相手の方はママのことを知ってるみたい。

ママって有名人なのかな?この前もメルさんって人に声かけられたし・・・・

アンジェリカはママの名前に傷をつけないようにしなきゃ。


それと、遺跡外で市に行きました。

そこで付加枠を使ってもらって、アンジェリカもちょっとだけ練習できたのよ。

いつもメリッサお姉ちゃんと猫さんの方がうまいから、アンジェリカはなかなか練習できないんだけど。

そういえば市にいったときに』



ここまで書くとアンジェリカは少しペンを置いた。

「不思議な人だったな・・・」


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

その人はアンジェリカが市に来た時は、煙草を吸って遠くを見つめていた。

アンジェリカが来たのは市が立ってから3日ぐらい経ってから。

どうやらその間に彼の合成枠は売れてしまったらしく、武器を磨いたり、煙草を吸いながらもう一つの売り物である武器作製の依頼を待っていたようだ。

その隣にはどうやら早めに売れた人が立ち去ったあとらしく、ぽっかりとスペースが空いていた。

ちょうど木陰になっていて、日も射さない。だけど、なぜか人通りが途絶えない場所。

ここなら一日座っていても大丈夫そう。

そう思った。


「すみません。ここ空いてますか?」


そういうと、その人はこちらを向いて、しばらくじっとアンジェリカを見てた。
なんだか値踏みされているような・・・。


「ここ空いてたら、私が使ってもいいですか?」


そういうと、そっとこちらに何かを渡すように手を差し出して。


「――別に俺の場所ってワケじゃないよ。」


そう言った。
ちょっと間接的だが、どうやら空いているらしい。


「じゃあ、お邪魔します。」


そういってアンジェリカは自分の場所を作り始めた。


+小+「・・・・・だったらなぁ」-小-


「はい?」


何か声をかけられたと思って振り返ると、その人は吸っていた煙草を指で弾いて足でもみ消していた。


「――ん?」


気のせい?
なんとなく気まずくて、髪の毛を指でくるくるっと巻き付けて、もう一度その人を見た。
でも、特に何もなさそう。

うん、気にしないことにしよう!
気を取り直して看板を立てる。

 

 

┌────────┐
│付加枠余ってます。 │
└────────┘

 

 

それからしばらくは誰も来ない。
隣の武器屋にも誰も来ない。
前を通る人はちらっと看板を見て、アンジェリカを見るとそのまま立ち去って行く。


丸一日待っただろうか。
最初のお客さんは隣のお兄さんに合成を頼んだ人だった。

背の高い黒髪のおじさん。
合成の話を隣でして、そのままふと看板に目を止めると、


「お嬢さん、せっかくだから私の武器に爪を付加してくれないかな?」


そういってにこっと笑った。


「わぁ!ご依頼ありがとうございます。」


アンジェリカが喜ぶと大きな手でアンジェリカの頭をわしわしと撫でると


「頑張りなさい。」


そう言って去っていった。

 

 

最初のお客さんが立ち去ってから、隣のお兄さんに

「ありがとうございます。」

ってお礼を言った。

でも、お兄さんは特に気にしていなかったみたいで、変な顔されちゃった。

そうよね。お兄さんが斡旋してくれたわけでもないし。


そう思ったけど、やっぱりこの場所でラッキーだったな、と思う気持ちが強くてにこにこしていたら、今度は綺麗な白い虎さんに依頼された。

これで枠は完売。

武器枠を売っているお兄さんは今日は一日売れなかったみたいでちょっと申し訳ないと思いつつ、アンジェリカは店じまいを始めた。

 

「痛っ!」


そう思った時には遅かった。

看板から棘が出ていて指を少し切ったらしい。

指先から少し血がこぼれる。

ポタリ・・・・ポタリ・・・・と。

 

そのとき背筋を何か冷たい気がよぎる。

思わず振り返ったとき・・・・・そっと誰かの手で目を塞がれた。

 

「10年は早いでしょう?」

 

緋魅???

いつのまにか私のそばに緋魅がいたみたい。

目を塞がれて見えないけど、多分、煙草を吸っていたお兄さんに声をかけたんだと思う。

ふっと体が浮く。

そして、市を離れてからそっと瞼を押さえていた手から開放される。

 

「緋魅?」


「見なくていいのですよ。」


「緋魅?何?」

 


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

結局緋魅が何を隠したのかは教えてもらえなかった。

だから、隣にいたお兄さんにお別れの挨拶はできなかった。

アンジェリカはペンを取ると日記の書きかけた部分に横線を引いた。


そういえば市にいったときに

付加枠は2枠とも売れてよかったです。

また遺跡内でも誰か付加枠買ってくれるといいな。』

 

それだけ書いてペンを置いた。

 

 

 

だから、彼女は見ていない。

気づいていない。

自分が何者の前で血を流したのか。

 

 

「惜しいなぁ――ジュウネン後だったらなぁ」


10年後だったら、少しぐらい貰っても・・・・

美味しそう。

ソノ血を堪能してみたかったかなぁ

相手がそんなことを考えていたことにも気づいていなかった。




※こんなに節操なくお腹すかせてない気がしますが・・・・
 とあるナイトウォーカーの方をお借りしました。がチキレ敗北とはどういうことだ・・・

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