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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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「再生します。」

小さな黒い影がそういうとどこからともなく人の声が・・・・

____________


遺跡外に住むケフと呼ばれる浮浪児の証言

「本当にどんくさそうな奴だったんだ。
なんかキョロキョロしててさ。

あれ、絶対にこの島に来てそんなに時間経ってない奴だよ。
それか、買い物とかしたことない奴。
たまに遺跡外に来ても食料だけ買って、なーーんにもしない奴っているじゃん。
多分、そういう奴だよ。

それがさー何買うわけでもなく市の一番端までぼーーっと歩いてさ。
あげく、そこで花買ってたんだよ。
それもさ、なんかテレてるのか、すっげー居心地わるそうでさ。

花屋の女将にバシバシ叩かれて、なんか満足そうに笑いながら歩いてたんだ。
もう、隙だらけで、こんなカモ逃してたまるかって思ってさ。
近くによっていってみても、すっげー無防備なんだ。

いける!

って思ってすれ違い様に掏ろうとしたときにさ・・・・なんか怖い姉ちゃんがそこにいたんだよ。



別に何をいうわけでもないんだぜ。
ただ、俺の方をじっと見て微笑んでるんだけど・・・
目が笑ってないんだ。
血みたいな赤い目で俺の方を見て・・・・。
しゃべらないんだぜ。何も・・・・声一つあげないのに、なんかわかったんだ。

『あれは私のものだ』

って。
あれ、絶対そういう意味だったよ。

そんでさ・・・・不本意だったけどあきらめたよ。
あんな怖い姉ちゃん敵に回したくねぇし。

え?何でって?
そりゃ、勘だよ。

あ、バカにすんなよ!!俺は俺の直感を信じてこうやって生きてるんだからな!
他の奴なら大丈夫だったかもしれない。
だけど、あのとき俺が手を出したら、きっと俺はいまここにこうしていない。

本当にあの姉ちゃんはやばいよ。
俺、仲間に言ったもんな。
赤い目で肩を出した服を着た踊り子みたいな姉ちゃんがいたらスルーしろって。

それでさ・・」

____________


(ぷちっ)何かの音がした。それと同時に声も聞こえなくなった。

「このあとはずっと子どもの自慢話が続きますので飛ばします。次を再生します。」

____________


遺跡外の花屋の女将の証言

「あぁ、そういえばそんな客もいたね。
なんか妙に初々しいお兄さんだったよ。

あぁ、そのそこの隅にある花を買っていったよ。
あれはさ、好きな女の子にきっと渡すんだよ。

え?ばっかだねぇ、決まってるじゃん!
わざわざ花を髪飾りにつけたんだよ。女の子に渡すにきまってるさ。

あれは告白かもしれないね。
なんか妙にどぎまぎしていたし。
次に来る時はかわいい女の子と一緒に来てくれると、あたしも髪飾りをつくった甲斐があったってもんだよ。

あぁ、あんたも欲しい?
いいよ、ちょっと待ってな。なぁに、すぐにできるから・・」


____________


(ぷちっ)

「こちらが同じものです。ご確認ください。」

テーブルの上に赤い花のついた髪飾りが落ちる。
誰が持ってきたわけでもない。
そこにテーブルごと突然現れたのだ。

細く長い白い指が髪飾りをつまむ。
赤い花はたちまち枯れてしまった。

「お気に召しませんでしたか?フィアヴェル様は気にいっておられましたが。」

白い指が残った金の飾りを指ではじき飛ばす。
床に落ちた髪飾りの残滓とテーブルは現れたときと同様に唐突に闇に消えた。

「では、次を再生します。」

____________


遺跡外の宿屋の主人の証言

「あぁ、この前のお客さんかい?
すまないけど、あんまりお客さんの話をするのは・・・なぁ。
うちも客商売だからさ。

ほっ・・・ほほー、こんなに。
いや、すまないね。
いやいやいやいや。こりゃ、参ったね。

それで、・・・・・何が訊きたいんだい?
差しさわりのない範囲で・・・なんだ、そんなことかい。お安い御用さ。

まぁ、仲良さそうだったよ。
食事を部屋に運んだんだが、ノックしてもなかなか返事がなくて、少し待たされたんだがな。
男の客のほうが赤い顔して食事を取りに出てきたな。
部屋の中にいた女性の方が余裕ありげだったから、ありゃ、あの女が若い男をからかってたんだろう。

ん?おいおい。若く見えたが、あれは・・・・
いや、なんでもない。気のせいかもしれんしな。

え?いや・・・なんちゅうか・・・・見かけのわりに妙な落ち着きがあってな・・・・。
あの感じからすると儂よりも上じゃないかというような風格がな・・・。
いや、気のせいかも知れん。
人によっては相当な修羅場をくぐると妙に落ち着いてたりするものだからな。

しかし、あそこまでとなると相当だろう。
きっと、あの女は少々のことでは動じない。
男と一緒の・・・その・・・なんていうか・・・・あられもない姿を見られても、笑って返してくるんじゃないか?

あそこまでいくとたいしたもんだ。」


____________


(ぷちっ)

「今回の調査はここまでです。多少のタイムラグはご容赦ください。」

黒い影が何やら謝っている。
イライラした男の声がそれを遮った。

「さっきの花の名前を知っているか?」

「いえ、申し訳ありません。同じ花をいただいて参りましたが、名前までは。」

「あの花は、アネモネというのだよ。それもよりにもよって赤を・・・。
 白か紫にでもしておけばまだ許せたものを。」

闇に溶ける声は苛立ちを隠さない。











「ずいぶんと機嫌が悪いのね。蠅どもに八つ当たり?お前ももう下がりなさい。」


第三の声が響く。
闇の中に現れたその人影が手を軽く振る。
それだけで黒い影はキィキィと声を上げて姿を変えた。
身の丈30cmほどの小悪魔。蠅と呼ばれる便利な使い魔。
影から姿を引きずり出された使い魔はキィキィと騒ぎながら慌ててその場から消えた。


「フィシアテル、何故ここに?」


闇から響く声を無視して、フィシアテル・・・フィスは何かを拾い上げた。
掌の上に藍色の光が集まったかと思うと、アネモネの装飾が再生されていた。

違っているのは二つ。
花の色は赤から紫へと姿を変え、髪飾りはブートニアへと姿を変えていた


「自分が共に行けなかったからといって、蠅を使ってあの子を監視するのはやめなさい。
 あの子はいつか戻るのだから。
 この花を持つべきは貴方ね。」


それだけ言うとフィスはその場を去った。
後に残ったのはテーブルの上のブートニアとそれを見つめる悔しそうな気配。
闇の中にいる負の感情。

憎むべきはあの青い髪の・・・・・



紫のアネモネがそっと揺れた。


まだ待ってあげて。
もう少し見守ってあげて・・・というでも言うかのように。



闇に響くため息一つ。

白く長い指がブートニアをそっと拾い上げた。
今度は感情に任せて花を散らすことはなかった。
花にあたっても仕方がないのだから。

ブートニアは闇へときえ、後に残ったのはただ深い闇。












紫のアネモネの花言葉は「あなたを信じて待つ。」








■第三回 文章コミュイベント■ ENo.1021 フィアヴェル=リーンディース・ディブロズさんをレンタル 

※煩悩ネタにするかこっちにするか悩んでこっちになりました。フィスさんの30日の日記読了後に読むこと推奨。
※アンジェリカPLは「煩悩満載はきっと超強力な戦闘系上位技能」と信じて疑わないので、そのネタでも面白かったかも。
※謎の男はフィアヴェルさんも知らない単なる独占欲の激しいストーカーですよ。きっと。

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