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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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嫌な気配がする・・・・・

少女を連れて遺跡内のビヴァークポイントに戻ってきたが・・・・・
あの海の気配が忘れられない。
何か・・・・


「緋魅、私が・・・・」


確かに海のような水の気配の強いところでは氷彌のほうが動けるかもしれない。
だけど・・・


「いえ、彼女が起きた時にそばに居て下さい。」


なぜか海に近いものを連れて行ってはいけない気がした・・・・



__/__/__/__/  SIREN  __/__/__/__/



音が聞こえる。
唸るような・・・・・響くような音が・・・・

これは 「何」 だ。

不快な音
鳴り響く音

そして・・・・・血色に染まる海。

これは・・・・・

黄泉還りではない・・・・海還り・・・

血色にうごめく者たち・・・
思わず息を呑む。
自分が地に足をつけていないことにこれほど感謝したことはない。

氷彌を連れてこなくてよかった。
精神体のさらに分身。
希薄な意識はこのサイレンに呑まれただろう。

そしてまた息を呑む。
見慣れた赤と青の髪。
火と水をあやつる・・・あれは・・・・






「シュライクお兄ちゃん?」


目が醒めてしまった。
あれは・・・・緋魅の目だ。
離れているのに・・・・離れているのに・・・・・緋魅の目にうつるものが見えた気がした。


気持ちが悪い。
髪から顔に赤い海水が滴って・・・
まるで血まみれになっているような・・・


「緋魅・・・」


夢だと思いたい。


「マスター?」


氷彌さんが声をかけてくれる。

そう。
いつもそうなんだ。
家のことを思い出したりして夜中に起きた時、アンジェリカの様子を見に来てくれるのはいつも氷彌さん。
緋魅じゃない。

でも、緋魅は夜に何をしているんだろう。


「マスター、起きてしまったのですか?ホットミルクでもご用意しましょうか?」


ベッドのそばまで来た氷彌さんがレイモンドを手渡してくれる。
それだけのことで私が落ち着くのを知っているから。


「氷彌さん、緋魅は?」


そう訊くと、少し困ったような表情をうかべた。
答えられないんだ。
やっぱり・・・・


「海に出かけたの?」

「ホットミルクをいれてきますね。お話は後で。」


そういって氷彌さんは台所に行ってしまった。

しばらく背中を見ていた。
背中を見ていたはずなのに、気づくとなぜか氷彌さんの手元が「視える」

何故?どうして??
氷彌さんは一瞬ふらついたみたい。

どうして、どうして?


「どうかしたのですか?」


硬質な声が響く。


「緋魅?」

「貴女はまた変なものを引き寄せて、変な力をつけそうになっていますね。」

「そうなの?」


氷彌さんがホットミルクを入れたマグカップを持ってきてくれた。
その氷彌さんに向って、緋魅が頷いた。

あぁそうか。
また何か封じるんだ。
氷彌さんの力が流れ込んできて、そしたら眠くて、眠くて・・・・ホットミルクを一口だけ飲んでそのまま・・・・・





「緋魅?」


マグカップを受け止めて、少女をベッドに寝かしつけ、緋魅はようやく氷彌と手をあわせた。
二人が一瞬一人になって、そして二人に戻る。

そして氷彌は息を呑んだ。


「緋魅・・・・」

「ここは海から遠い。大丈夫だとは思いますが・・・・海は今ひどいことになっていますよ。」


屍体・・・・・血のような水を滴らせたあのなんともいえない者達。
少女は夢だと思ってくれればいいが・・・

しかし、何故見えてしまったのだろう。
他人の目を借りるなど・・・・・そんな力は持っていなかったはずなのに。


「朝を待ちましょう。あのサイレンは良くないものです。」


そういって結界を張った。

だから・・・・・結界を張ってしまったから気づけなかった。



☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆




その日の夜も深まり・・・・島にサイレンが鳴り響いたとき、少女と二焔霊が花火を見ていた小屋の跡地に小さな鬼火が舞い降りた。
だが、誰も気づかなかった。

小さな炎はゆらゆらと寂しげに揺れて、ベンチの代わりになっていた倒木を燃やし尽くした。
結界が無ければ小さな火に気づいたかもしれない。
だが、結界が気の流れを阻んだ。

・・・・やがて小さな炎は消えた。

焼け跡だけが小さな炎を憶えていた。

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