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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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氷彌「教えていただけませんか?どうして10才の子どもをあの島へ?」
 

 
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緋魅「今日の日記は書き終わったのですか?」
 

アンジェリカ「うん、終わったよ。お茶の準備するね。」
 

緋魅「お茶の時間にお話したいことがあります。」
 


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆


「私からの話の前に、何か聞きたいことがあるんじゃないですか?」


そういわれると困ってしまう。
最近二人が時々いないこと、
二人で何か考えこんでいること、
ちょっと気になっていたけど話して欲しかったから待っていたこと、を訥々と話した。

緋魅は少しだけ視線を泳がせた。


「そうですね・・・・聞かれても答えられなかったかもしれません。」

「今じゃ無くてもいいよ。二人が話せるようになったら話してくれればいいから」


そんな顔をされても困ってしまう。
二人は私をマスターと呼んでくれるけど、そういうのって無理強いはしたくない。
無理に話してもらっても、アンジェリカには重すぎる話なのかもしれないから。

二人が話して良いと思った時に話して欲しい。
でも、話せないなら、話せるようになるまで、嘘でもいいからなんでもない振りをしてくれればいいのに・・。

そう思った。


「ただ迷っていたのです。」


緋魅はゆっくりと時間をかけて話してくれた。
あの卵の話。

マナに狂い掛けていた華煉さんがあの中にいる。
浄化したのはアンジェリカらしいけど、そんな力を持っているアンジェリカのそばに卵をおいていいのか?
そう悩むようになったのだと。
緋魅が偽妖精から開放されたように、アンジェリカは何故か緋魅や氷彌さんや華煉さんに干渉してしまうらしい。

無垢な卵。

受けた影響が浄化だけで済むならいい。
今は良い影響しかなかったように見える。
だが、「影響を受ける」と言うことは「変わる」ということ。


「私は華煉が華煉でなくなってしまうことが怖かった。」


それだけで緋魅が華煉さんを大事に思っているのがわかってしまった。
緋魅が卵と一緒にアンジェリカから離れたいと思うなら・・・・


「いえ、貴女から離れたら、私も卵もこの島の影響を受けてしまうでしょう。
 それが確実なので、貴女からは迂闊に離れられそうにない。
 ・・・・すみません。少し調べさせていただきました。貴女のご両親のこと。」

「アンジェリカのパパとママ?」

「えぇ、今も貴女の御尊父に氷彌が会いにいっています。」


びっくりした。
緋魅と氷彌さんが時々この島を出ていることなんて知らなかった。
大体、二人はこの島の獣達の身体を借りているのに。
この島のものはこの島から持ち出せないのでは??


「私も、氷彌も、華煉も精神体ですから。この島の「もの」ではありませんよ。」


今の卵がどうなってしまうかはわかりませんが・・・・

そういう緋魅は少し不安そうな顔をして俯いた。
この島で出来た卵。
この島の「もの」ならこの島からは出れない。


「まぁ、それはいいのですよ。この島の異常がなくなりさえすれば。
 それよりも教えていただけませんか?」

「何を?」

「貴女の御母堂の持っている力について。」


氷彌さんがママとパパに既に会っていたなんて。
パパが自分の力を話したことにも驚いたけど、ママの力にも驚いた。


「ママは力を持っていないと思われてたのに・・・・」

「貴女の御尊父が封じておられるようですよ。
 聞いた限りでは強い結界構築力をお持ちのようですが・・・・。
 貴女の御尊父は銀のオーラは結界と浄化だと教えて下さいました。
 ですが、御母堂についてはあまり教えて下さいませんでした。
 オーラの色から考えると貴女の御母堂の金というのはどんな特性なのですか?」

「うーーん・・・パパが言わなかったとなると、アンジェリカから言ってもいいのかな?」

「私は魅縛のような力ではないかと思ったのですが。召喚士だとおっしゃってましたよね?
 召喚というのは、他の『界』にいるものを縛して呼ぶ力なのでは?」


魅縛?捕縛と魅了をあわせたようなものなのかな?
貴女の惹きつける力は強いから・・と緋魅が言うのを見てたら、ちょっと恥ずかしい。


「やだなぁ。ママはそんなの持ってないよ。だって、「魅惑」や「魅力」はアンジェリカがこの島に来てから自分で磨いたものだもの!」


それを強いと言われると照れちゃう。

ママの力か・・・・
別に秘密ってほどでもないけど・・・・これを言うと緋魅は困っちゃうかもしれない。


「パパの力は『結界』と『浄化』でしょう?
 それってつまり他からの影響を受けないようにして、現状を維持する力ってこと。
 ママの金の力はそれと対を成す力だよ。」

「と・・・・いいますと?」

「金のオーラは・・・・・『変革』と『打破』。
 古い時代を打ち消して、新しい秩序を生み出す力。
 ママのその力はパパが封じているのね。」


アンジェリカにはほとんど受け継がれていないはずなんだけど・・・・
パパが氷彌さんにアンジェリカはパパとママの力を引いているって話したんだって。
本当なのかな?

でも緋魅はさっき言った。
華煉さんが変わってしまうのが怖いんだって。
それなら、アンジェリカのそばにいるのってマイナスなんじゃないのかな?

今緋魅が居なくなると困る。
だけど、アンジェリカにとってママが一番大切なように、緋魅にとって華煉さんが一番大事なら止められない。


沈黙が重い。
緋魅が考え込んでしまったのがわかる。
でも、どうしようもない。


「緋魅」

・・・・どうしたいのか言って・・・

たったそれだけの言葉なのに言いたくない。

どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。

頭の中をずっと言葉が舞ってる。

「ど」「う」「し」「よ」「う」



すっと空気が冷たくなる。
これは・・・・


「緋魅、マスター、遅くなりました。」

「氷彌」
「氷彌さん」

「緋魅、居ない間の・・・」
「そうね・・・・マスター少し待っていてください。二人で情報を交換しますから。」


これは二人が一度「緋魅」に戻るって意味だ。
氷彌さんは元々緋魅の中から引き出された精神体。
二人が一人になって記憶を統合する方が情報の交換は早いって聞いてる。


「うん、いいよ。」


そういうと二人はスッと消えた。



5分ほど待っただろうか?
緋魅が戻ってきた。
そして・・・・こう言った。



「マスター・・・・・家に戻ってもいいのですよ。」

(次回に続きます)

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