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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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『10日目の日記

今日は遺跡外でお買い物の日でした。

みんな質素な保存食や簡単な保存食を買ったりしてました。

アンジェリカも食事を買って、あと遺跡外でお料理もしてもらいました。

ホワイトシチューとシナモンアップルパイ。

アンジェリカの大好物です。

だけど、この大好物を我慢すると便利な宝石が出来ると聞いたので、我慢することにしました。』

 

「宝石が欲しいのなら何か作りましょうか?」


はっと気づくと目の前にオレンジ色の長い髪。


「緋魅、日記は盗み読まないでって言ったでしょう!!」


だが、緋魅はにっこり笑うとこう言い返した。


「忘れるマスターが悪いんです。」

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

そう。
遺跡外に出てきたあの日。
日記を書いていた少女は、呼ぶまで出てくるなと言って、そのまま忘れて眠ってしまい・・・
あろうことか、仲間と合流するまで私のことを忘れていた。

ようやく呼ばれたときにわざと疲れた顔をして現れてみた。
あのときの少女のすまなそうな顔といったら・・・。


「マスター、大丈夫です。気になさらないで下さい。
 私はマスターにそんな顔をさせたくはありません。」


と、疲れを抑えたような声を出し、無理な笑顔でやさしく言ったら、半泣きの顔で何度もごめんなさいと言ってしがみついて謝った。
実に興味深い。


おまけに、もう消えていてなんて二度と言わない!とまで言ってくれた。

言葉には力がある。
これで彼女は私に消えろとは言えない。


さぁ、どうする?


今、日記をわざと盗み見た私を睨みつける彼女の目も実に興味深い。
人間というのはこんなに面白い生き物だったのか?

 

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

思わずため息一つ。
日記を書くときは消えて欲しいけど、消えてとは言えない。
それはやってはいけないことだ。


「緋魅、日記を読むのはやめてちょうだい。」

「読まれるのが嫌なんですか?」

「えぇ、嫌よ。私の嫌がることはしないんでしょう?」


緋魅が少し目を細めた。
少し不愉快そう。
でも・・・日記を読まれるのは我慢できない。
私は緋魅の目をしっかりと受け止めた。


先に視線を外したのは緋魅。


「お茶の準備でもしていますので、早めに日記を仕上げてくださいね。」


そういうと緋魅はテントの外に出て行った。
魔法陣から近い平原のビヴァークポイント。
私達は今ここにいる。

 

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

ちっ。
そう来たか。


確かに日記を見るなと言うぐらいは何の縛りもない。

だが、彼女は気づいただろうか?
私は
「日記を見ない」
ということに同意はしていない。
単に席を外しただけだ。

日記を読まないなんてそんなことに同意ができるはずなかろう。
彼女はいつ私を切り捨てるかわからないのだから。

もっとも・・・・
今の私の力なら偽妖精から離脱して他のペットに憑依することも出来そうだ。
彼女がペットを変えたとしても、私がついて行くことに何の支障もない。


お茶の準備をしながら、緋魅は力を揮う。
もちろん台所からアンジェリカの日記を盗み見るために。

 

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

『そうそう。遺跡外で練習試合もしました。

今回は特に相談もせず、なんとなく技を試してみました。

負けちゃったけど、アンジェリカは最後まで立っていたのでびっくりしました。

いつもアンジェリカの体力が無くて最初に倒れちゃうのに。


多分、ケサちゃんとフローラお姉ちゃんの装備がいいから、アンジェリカは狙われなかったのかなって思いました。

アンジェリカも装備をがんばって強くしなきゃって思いました。


それから・・・はじめて付加のコツを掴んだ気がします。

お料理も楽しいけど付加も早くうまくなりたいなぁ。って思いました。


このあとまた遺跡内で戦闘です。

短剣と弓をもっともっとうまくなりたいです。

ペットはフローラお姉ちゃんとケサちゃんと話して、しばらくは偽妖精の緋魅さんでもいいねって言ってます。

ただ、メリッサさんに聞いたら、アンジェリカが次に負けたら緋魅さんが離れちゃうかもしれないみたいです。

負けないようにがんばります。

アンジェリカ、今はこれしか出来ないし。

早く強くなりたいです。』

 

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

 

ほう・・・・

なるほどね。
確かに私の意識で抑えている偽妖精がじたばたしている。
魅了されても永続的ではないということか。

これは早めにこの偽妖精を潰してしまう方がいいんじゃなかろうか?

そんなことも考えなくもない。
もっと彼女にふさわしい動物を。
見つけさえすれば、私が縛ってしまえばいい。

彼女の引きはどうも弱い。
彼女の力が弱いからだろうか?
それとも逆に彼女の力が強いからか??


「実におもしろい。」


緋魅はそういうとティーカップをお盆に載せた。
アンジェリカはどうやら日記を書き終えたようだから。


にこやかな顔を作り、テントの中へと入る。


「マスター、お茶の準備が出来ましたよ。」


もう少し。
まだ足りない。
この興味深い人間を私はもっと見ていたい。
そのためにもこの人間が力尽きては困るのだ。
もっと
もっと
もっと強い力を。

 

「今日はシナモンクッキーですよ。シナモンはお好きでしょう?」

 

そう。
もっと私の前で素直になるがいい。
もっともっと・・・・


「・・・・ぶかい」

 

少女が振りかえる。


「緋魅、何か言った?」


にこやかに微笑み応じる。


「いえ、何も。」
 

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