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精霊伝説:波紋を斬る者 ヴェル、災渦の日記 (+カヤ・ボーフォートのセルフォリーフの日記、アンジェリカ・ラッセルの偽島探検記+イシュケ、翠祀)
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島探索4日目の日記

『遺跡の外にでてから、魔法陣が開くまでがとても短かったです。

この前まで1週間待たされていたのが嘘のよう。

遺跡外でバタバタと買い物をしました。

おうちの本棚にあった『合成の友』っていう本によると食料を混ぜると枝が出来るらしいです。

アンジェリカにはよくわかりませんでした。

 

そういえば、落ちてた薬を2個混ぜると変なものが出来て、それから弓やリボンができました。

この島には不思議がいっぱいです。
 


『合成の友』によると、パパにもらったナイフとママにもらったワンピースも混ぜることが出来るらしいです。

パパとママは教えてくれなかったけど、パパのナイフには集中力を上げるおまじないがかかってました。

さすが、パパだ!!と思いました。

ママにもらったワンピースは身を守るものなのに攻撃力の上がるおまじないがかかってました。

・・・・やっぱり、ママだなって思いました。

ママのワンピースをパパのナイフに混ぜると、命中率が上がるようになるみたいです。

これもアンジェリカにはよくわかりませんでした。

 

よくわからないけど、本の通りになるかどうか試してみようと思って、質素な保存食っていう御飯を買いました。

これをおいしい草か、この前拾った小さな牙に混ぜると赤い枝ができるらしいです。

今度合成出来る人にお願いしてみようって思います。

 

それから、これもおうちの本棚にあった『付加大全集』によると、アンジェリカの拾った白い石はリボンにつけても面白いものらしい

です。

メリッサお姉ちゃんなら使えるみたいなので、メリッサお姉ちゃんにつけてもらうことにしました。

 

この島のメッセージサービスはとても行き届いてるみたいで、

いつもAchtお兄ちゃんや、たぬしゃんや、ソルティしゃんとお話が出来ます。

探索の4日目には3日目に練習試合したギュイさんからメッセージが届いてました。

アンジェリカもやり手だって誉めてくれました。

よくよく振り返ったらギュイさんは優しくてアンジェリカのことを叩いたのは1回だけでした。

グリンダさんにはたっくさん叩かれてました。

今度あった時には叩かれないようにがんばります。

 

いよいよ、2回目の遺跡突入です。

今まではコロネさんと椿さんとシュライクお兄ちゃんと一緒だったけど、今度から班分けが変わります。

今度アンジェリカと一緒なのはケサちゃんとフローラお姉ちゃんです。


ケサちゃんはアンジェリカと同じで10歳です。

お耳と尻尾があるけど、この島には獣人さんたちがたくさんいます。

ケサちゃんは一人じゃないみたいだけど、アンジェリカはまだケサちゃんのお友達に会ってないです。


フローラお姉ちゃんは植物のことが詳しい人で、草とかはっぱとかが大好きみたいです。

槍を持ってて、とっても強そうです。

あと、フローラお姉ちゃんはお料理も上手みたいです。

今度フローラお姉ちゃんに美味しい料理を教えてもらおうと思います。


今、ケサちゃんとフローラお姉ちゃんとアンジェリカは、また野犬さんたちを狩ろうと準備しています。

遺跡外に出た時に保存食を買おうと思ったら、遺跡の中でたくさんの狩をしないといけないみたいです。

この前は野犬さんたちにたくさん避けられちゃったけど、今度は野犬さんたちに避けられないようにがんばろうって思います。


最近遺跡の中は寒くなってきたので、装備が揃ったら手袋とかマフラーを用意したいなって思います。

そのためにも狩りをがんばります。』

 

遺跡の中のビヴァークポイントで日記を書いていたアンジェリカはそっとペンを置いた。


遺跡の中では戦闘が日々行われており、どうやら敗北するものたちもいるらしい。
アンジェリカたちの複合パーティはそれなりの強さを持っていると思うが、やはり油断大敵。
今回は静かに狩りの準備を整えることにした。


「ねぇ。レイモンド。大丈夫だよね。」

髪の毛の毛先をくるくるとカーラーに巻きつけて、ナイトキャップを被ると、レイモンドを抱いて毛布に包まった。

やわらかいガーゼの帽子
レイモンドから香るほのかな香草の香り。

「おやすみなさい。」

そういってそのまま眠りについた。

 

アンジェリカは夢を見た。

  アイリーン様とアグライア様がお話をしている。

  アイリーン様が何か叫んでる。

  「恥ずかしくないの!あんな小さな子を戦いの場に送り出すなんて。
   私が祭主職にある限り子どもを産めないことはわかっているんでしょ?
   子どもを産むのは姉さまの義務よ。忘れたの?」

  アグライア様は何か答えたけど、その声は聞こえない。
  アイリーン様はアグライア様の返事を聞いてさらに怒ったみたい。
  やだなぁ・・・アイリーン様ってば杖を振りかぶってる。
  アグライア様は槍の名手だから杖なんて当たるはずないのに。

  あ、ママだ。

  ママが部屋に入ってきた。
  ママが何か言ってる。
  アイリーン伯母様の杖を取り上げて・・・・あ・・・・ママってば杖を変に強化しちゃった。
  あれじゃあ、アイリーン伯母様には使えなくなっちゃう。

  あれ?アグライア伯母様出て行っちゃった。

  アイリーン様は今度はママに怒ってるみたい。
  マーマ、どうしたの?そんなに辛そうなお顔しないで。
  アイリーン様、ママをいじめないで。

  パパ、パパ、早く来て。
  ママが可哀想。
  約束したでしょ?アンジェリカが家を離れてる間はパパがママを守ってくれるって。
  マーマ、お願い、そんなに哀しそうなお顔しないで。
  お願い。


「マーマ・・・」

呟いて目が醒めた。
目が醒めて・・・一瞬自分がどこにいるか思い出せなかった。
そう、ここは遺跡の中だった。
パチパチと何度か瞬きをして、上体を起こす。

「なんでこんな夢見ちゃったんだろう。TAGさんに会ったからかな?」

褐色の肌も黄金色の髪もママにそっくりだったTAGさん。
ママよりも落ちついてて、優しそうだった。

ごそごそとレイモンドについている隠しポケットを探る。
そこにあるのはパパとママの絵姿。


パパとママ・・・・大丈夫かな・・・。


遺跡の闇は深く、答えはあるはずもない。
ため息を一つつくと、絵をレイモンドの中に戻して、アンジェリカは再び横になった。
 

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